結論から書きます。
甲状腺機能低下症の代表的な原因が、橋本病(慢性甲状腺炎)です。
その橋本病だからといって、「のり」や「わかめ」などの海藻をすべて避ける必要があるわけではありません。
一方で、橋本病の人は、そうでない人と比べてヨウ素の過剰摂取の影響を受けやすいとされています。
そのため、
「海藻を全部やめる」ではなく、「ヨウ素を積極的に摂りすぎない」。
私はこれくらいの理解が、普段の食生活ではちょうどいいのではないかと思っています。
甲状腺専門の隈病院も2026年の解説で、橋本病では一律のヨウ素制限が必要なわけではない一方、「積極的には取らないようにするぐらいがよい」と説明しています。
そして、ヨウ素を多く含む食品の中でも、私が家族の食事を考えるうえで特に気にするようになったのが昆布でした。
私は医師でも管理栄養士でもありません。
2年ほど前に家族が橋本病と診断されたことをきっかけにヨウ素について調べ始め、今は昆布を使わない「だし」を販売しています(記事の最後で紹介します)。
この記事は、公的機関や甲状腺専門病院の情報をもとにまとめています。医師から食事の指示を受けている方は、その指示を優先してください。
なお、ヨウ素の量はμg(マイクログラム)で統一します(1mg=1,000μg)。
甲状腺機能低下症(橋本病)でも、特別な食事制限が必要とは限らない
隈病院は、橋本病について、普段の食事で「食べてはいけない食品」は基本的にないと説明しています。
甲状腺が大きくなく、甲状腺機能が正常な場合や、甲状腺ホルモン薬を服用している場合には、ヨウ素を過度に気にする必要はないという説明もされています。
一方で、橋本病の人はヨウ素の過剰摂取による影響を受けやすいことも指摘されています。
ですから、「ヨウ素を含む食品は食べてはいけない」ということはありませんが、「いくら食べても大丈夫」でもありません。
私自身は、「普通の食事は必要以上に怖がらない。ただし、ヨウ素を意識的に大量摂取することは避ける」と理解しています。
のりやわかめは食べてもいいの?

医師からヨウ素制限を指示されていなければ、のりやわかめを一律に避ける必要はありません。
前の章で紹介した隈病院の説明のとおりです。気をつけたいのは、海藻の種類と食べる量です。
海藻といっても、のり・わかめ・昆布では、含まれるヨウ素の量が大きく違います。
文部科学省の食品成分データベースの数値をもとに、乾燥状態の1gあたりで比べると、次のようになります。
| 食品 | ヨウ素量(乾物1gあたり) |
|---|---|
| まこんぶ(素干し・乾) | 約2,000μg |
| 干しひじき(乾) | 約450μg |
| カットわかめ(乾) | 約100μg |
| 焼きのり | 約21μg |
同じ重さで比べると、まこんぶのヨウ素量は、カットわかめの約20倍、焼きのりの約95倍です。
ただし、これは違いを見るために重さをそろえた比較で、1食分の量ではありません。実際に摂る量は、食べる量や調理方法によっても変わります。
ヨウ素は、1日にどのくらい必要?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上の成人について、ヨウ素の基準を次のように定めています。
※妊娠中・授乳中の方は別の設定。
- 推奨量:140μg/日
- 耐容上限量:3,000μg/日
推奨量は、ほとんどの人が必要な量を満たせるように設定された目安です。140μgを超えたら、すぐに摂りすぎになるという意味ではありません。
耐容上限量は、習慣的に摂り続けたときの健康への悪影響を避けるための基準です。
ただし、橋本病の人にとって「毎日3,000μgまでなら大丈夫」と判断するための数字ではありません。
伊藤病院は、昆布などヨウ素を多く含むものを継続して大量に摂ることで、甲状腺機能が低下する人がいると説明しています。
私自身は、数字だけで食べてよい・悪いを決めるのではなく、どの食品に多く含まれるのかを知り、同じものを毎日たくさん摂り続けないようにするための参考にしています。
日本人はもともとヨウ素を多く摂っている

隈病院によると、日本では海藻や魚介類を食べる習慣があり、多くの人が1日に約1,000~3,000μgのヨウ素を摂取していると考えられています。
普段の食事から十分な量を摂れているため、ヨウ素が不足する可能性は低いと説明しています。
では、ヨウ素を多く含む食品を1食分で見ると、どのくらいになるのでしょうか。成人の推奨量(1日140μg)と比べると、次のようになります。
| 1食分の例 | ヨウ素量 | 推奨量140μgに対して |
|---|---|---|
| だしに使う昆布(1g) | 約2,000μg | 約14倍 |
| ひじきの煮物(乾燥5g) | 約2,250μg | 約16倍 |
| わかめの味噌汁(乾燥1g) | 約100μg | 約71% |
| 焼きのり1枚(3g) | 約63μg | 約45% |
※食品成分データベースの100gあたりの値から計算しています。「だしに使う昆布」は昆布1gに含まれるヨウ素の量で、だし汁に溶け出す量ではありません。
推奨量を超える食品もありますが、日本人はもともと1日に約1,000〜3,000μgのヨウ素を摂っていると考えられています。気をつけたいのは、隈病院も挙げているように、「体によいから」と海藻を意識して頻繁に食べたり、おやつ代わりに食べ続けたりすることです。
だから私は、普段の食事を必要以上に心配するよりも、「体によさそうだから」とヨウ素を多く含むものをわざわざ増やさない。
そのくらいの付き合い方でよいのだと受け止めています。
海藻を全部避けるのではなく、種類と食べる量に目を向ける。その中で、私が特に気になったのが昆布と昆布だしでした。
なぜ私は「昆布だし」を意識するようになったのか
もうひとつ、私が気になった数字があります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、日本人のヨウ素の主な供給源について、昆布60%、昆布だし30%、その他10%と推定されています。
日本人のヨウ素摂取量を考えるうえで、昆布と昆布だしの影響が大きいということです。
もちろん、食生活によって摂る量は違いますが、この推計からは、昆布や昆布だしが大きなヨウ素の供給源になっていることが分かります。
昆布そのものだけでなく、「だし」が大きな供給源になっているという点は、私にとって意外でした。

昆布そのものなら分かりやすいんです。
- 昆布の佃煮
- とろろ昆布
- 昆布茶
ところが、だしになると見えなくなります。
味噌汁、煮物、うどん、そば、鍋つゆ、調味料。
自宅で昆布を買っていなくても、昆布だしや昆布エキスが使われていることがあります。
それから、毎日の料理に使うだしにも目を向けるようになったのです。
では、毎日のだしはどうする?
家族が橋本病と診断されたとき、医師からは「そこまで神経質になる必要はない」という趣旨の説明を受けました。
それでも初めて聞く病名でしたし、家族のことなので気になります。
スーパーでも、食品の原材料表示を見るようになりました。

そこで気づいたのが、昆布や昆布エキスを使った食品の多さです。和風だしを探してみても、昆布とかつお節を組み合わせたものがたくさんありました。
私自身、昆布は好きです。昆布を悪いものとして避けたいわけではありません。
ただ、だしは毎日の料理に使います。そこで、家族と「普段使うだしを、昆布が入っていないものに変えてみようか」と話すようになりました。
医師から指示されたことではありませんが、わが家では、毎日使うだしには昆布不使用のものを選ぶことにしました。
そうして、昆布を使わず、おいしく続けられるだしを探し始めました。
3か月、昆布を使っていないだしを探しました
条件は3つでした。
- 昆布を原材料として使っていないこと
- 調味料(アミノ酸等)や酵母エキスに頼らず、素材を中心に作られていること
- 毎日使いたいと思える味であること
2つ目と3つ目は橋本病とは関係なく、素材の味を楽しめるだしがいいという、わが家の好みです。
昆布不使用という条件だけなら、商品は見つかります。
ところが、原材料まで見ていくと、私が求めているものはなかなか見つかりませんでした。
最初は九州で探し、その後、全国に範囲を広げました。
取り寄せて実際に試したのは4~5種類。
その中で最後に残ったのが、鹿児島のメーカーが作っているだしでした。
使われているのは、いりこ、あご、かつお節、さば節、原木しいたけ。昆布は使われていません。
調味料(アミノ酸等)や酵母エキスを使用せず、素材の組み合わせで味を作っています。
実際に家で味噌汁を作って飲み比べ、最後は家族全員の意見が一致しました。
今も、わが家では毎日の味噌汁に使っています。

私はもともと、食品の販売をしています。
だから、このだしを自分たちの家だけで使うのではなく、わが家と同じようにヨウ素を気にしている方にも届けたいと思うようになりました。
原材料を確認して、取り寄せて、食べ比べる。自分で探してみて、毎日使いたいと思えるだしに出会うまでには、思った以上に時間がかかりました。
同じように探している方に、このだしがひとつの選択肢になればと思っています。
昆布を使っていないことに加えて、家族で「おいしいね」と食べ続けられること。私が届けたいのは、その両方を満たしてくれただしです。
そうして商品化したのが、totowa 昆布不使用 天然だしパックです。
昆布を使わない天然だし
totowa 昆布不使用 天然だしパックは、いりこを主役に、かつお節、さば節、あご、原木しいたけを合わせただしです。昆布は使っていません。
※昆布不使用ですが、魚介原料由来のヨウ素は含まれます。
※医師からヨウ素制限を指示されている方は、主治医に確認のうえでお選びください。
昆布を使わなくても、毎日の味噌汁をおいしく食べたい。その味を支えているのが、5つの素材の組み合わせです。
いりこのコクに、かつお節・さば節・あごの風味が重なり、原木しいたけがうま味を添えています。
食塩や調味料(アミノ酸等)、酵母エキスは加えず、素材そのものの味を生かしています。
原材料は、すべて九州産です。
- いりこ・あご:長崎県産
- かつお節・さば節:鹿児島県産
- 原木しいたけ:大分・熊本・宮崎・鹿児島県産
使い方は、水500mlにだしパックを1袋、水から入れて煮出すだけ。
わが家で毎日使っている味噌汁のほか、煮物や鍋、炊き込みご飯にも使えます。
食塩を加えていないので、味噌や醤油で好みの味に仕上げられます。
袋を破って、中の粉末を炒め物やチャーハンに使うこともできます。だしを取るだけでなく、素材ごと料理に加えられるのも便利なところです。
1袋8g、20袋入り。特別な料理のためではなく、いつもの食卓で使ってもらいたいだしです。
使った人の感想と、おいしく使うコツ
Amazonのレビューでは、「やさしい味わい」「後味がすっきりしている」という感想が寄せられています。
一方で、「物足りない」という感想もあります。昆布入りのだしや、塩・うま味調味料が入った顆粒だしに慣れていると、薄く感じるかもしれません。
いりこを主役にしているので、昆布だしのまろやかさとは違う、魚介の風味が前に出る味わいです。お吸い物より、味噌汁や煮物に向いています。わが家では、いりこ好きの妻が「おいしい」と言って、毎日の味噌汁に使っています。
物足りなく感じるときは、次の方法で調整できます。
- 味噌や醤油で、好みの濃さに整える(食塩を加えていないため)
- 水の量を減らす、またはパックを増やす
- 豚汁や根菜の煮物など、具材からもうま味が出る料理に使う
煮出し時間は、わが家では沸騰してから5分ほどで取り出しています。長く煮出すとえぐみを感じる方もいるようなので、気になる方は試してみてください。
昆布を使わないだしを探している方に、まずは普段の味噌汁で試していただけたらうれしいです。
検査や治療のために、医師から一時的にヨウ素を控えるよう指示されることがあります。その場合は、病院から指示された食事内容に従ってください。
たとえば、甲状腺がんの放射性ヨード治療では、治療に使うヨウ素を病変に取り込ませやすくするため、治療前に一定期間、食事から摂るヨウ素を制限します。
制限の対象は、昆布だけとは限りません。わかめ、のり、ひじき、寒天のほか、昆布だしや昆布エキスを使った調味料なども含まれることがあります。
隈病院では、ヨウ素制限が必要な方に、市販の調味料の原材料表示を確認するよう案内しています。
また、外食では昆布だしを使っているか分かりにくいため、注意が必要としています。
出典:隈病院 甲状腺ナビ「【ヨウ素制限】ヨウ素が多い・少ない食品は?外食時の注意点を隈病院の医師が解説」
何を、いつからいつまで控えるかは、検査や治療によって異なります。食べてよいか迷うものがあれば、主治医や管理栄養士に確認してください。
まとめ
家族が橋本病と診断されたとき、私は「何を食べてはいけないんだろう」と気になりました。
調べていくうちに分かったのは、橋本病だからといって海藻をすべて避ける必要はないこと。
ただし、ヨウ素を多く含むものを、毎日たくさん摂り続けることには気をつけたいということでした。
私が特に意外だったのは、昆布そのものだけでなく、だしもヨウ素の大きな供給源になっていることです。
それまで、料理に入っているだしの原材料までは気にしていませんでした。
昆布は今でも好きです。
そのうえで、わが家では毎日の料理に使うだしを、昆布不使用のものに変えました。医師から指示された制限ではなく、家族で話して選んだ方法です。
毎日の食事なので、おいしく食べられることも大切にしたい。
探して、食べ比べて、今も使い続けているだしを、同じように探している方にも届けたいと思っています。
この記事が、食事で何を気にすればよいか迷っている方の参考になればうれしいです。
この記事について
この記事は、厚生労働省、文部科学省、日本内分泌学会、甲状腺専門病院等が公開している情報をもとに、一般的な情報をまとめたものです。
診断・治療・個別の栄養指導を行うものではありません。橋本病の状態、甲状腺機能、服薬状況、妊娠、検査・治療内容などによって適切な食事は異なります。
医師から食事やヨウ素について指示を受けている場合は、その指示を最優先してください。
主な参考資料
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
- 文部科学省「食品成分データベース」
- 隈病院 甲状腺ナビ「橋本病の食事療法」
- 隈病院 甲状腺ナビ「【橋本病】食事制限はある?」
- 伊藤病院「ヨウ素と甲状腺の関係」
- 日本内分泌学会「橋本病(慢性甲状腺炎)」
- 東京都立駒込病院「甲状腺癌の放射性ヨード治療」
記事内の数値・情報は2026年9月時点で確認しています。食事摂取基準や医療情報は今後改定されることがあります。

